〇黒井不法投棄問題(山口県)

◇2023年2月1日
1.黒井不法投棄問題とは
  山口県下関市で起きている問題で、土地を資材置場(土砂のみ)として使いたいとの申し入れを受けて、連帯保証人を入れての契約を
 交わしたところ、当初は土砂(残土)のみの搬入だったものの、そのうち、コンクリートくず等も混入するようになり、放置されている
 問題です。
  驚いたことに、問題が起きてから13年間も経っていることです。土地所有者の金山三郎さんは、すぐに下関市にも下関警察署にも訴え
 られましたが、事件にはされず、13年間も放置状態が続いているのです。
  金山三郎さんを長年支えてこられた鍬野保雄さんから送っていただいた資料を次に掲げます。
  鍬野氏による説明及び神原里佳しによる週刊金曜日(2022.9.9)記事
  金山氏・鍬野氏によるパワーポイント報告
  下関市の回答(2010.2.7)
  上関原発問題を通じて知り合った鍬野さんからお聞きして、「長年廃棄物問題を研究してきたので、助言できるかもしれません」と言った
 ことから、資料を送っていただき、年末年始に検討しました。
  幸い、ポイントになる点に気づき、助言しましたが、その内容については、次回、報告したいと思います。

◇2023年2月10日
 1.黒井不法投棄問題のポイント
  2月1日に記した黒井不法投棄問題のポイントは、「廃棄物の定義」にあったのです。
  金山三郎さんは、13年間、実に熱心にこの問題に取り組まれてきました。廃棄物処理法など、関連する法律も勉強されてきました。
  しかし「廃棄物混じりの残土」が産廃ではないか、という視点に基づいて取り組まれてこられたので、行政が受け付けてこなかったのです。
  気づけば、簡単なことなのですが、「廃棄物混じりの残土」が産廃で、それを放置するのは不法投棄ではないか、という見解ではなく、廃棄物を
 残土に混入させていることが自体が不法投棄ではないか、という見解に基づいて攻めていけばよいのです。
  以下、1月4日付けで鍬野保雄さんにお送りしたファイルの一部を掲げます。
  一. 黒井事件についてのコメント
  1. 黒井事件は「産廃の不法投棄」の問題
   黒井事件は、結論として、「産廃の不法投棄」の問題です。
   しかし、下関市は、産廃の不法投棄問題であることをごまかしています。
  2.下関市のゴマカシの手法は「廃棄物混じり土は廃棄物でない」
   下関市のゴマカシの手法は、「廃棄物混じり土は廃棄物でない」です。
   一般に、廃棄物か資源かの基準として「有価物か否か」という「取引価値の有無」が用いられます。残土は,有価物として取引されることが
  多いため、それを利用して、下関市は、少々の廃棄物が混入していても、有価物として取引される程度であれば、「廃棄物混じり土は廃棄物
  でない」としているのです。
  3.行政を攻めるには、論文等は効果がない
   下関市のゴマカシを攻めるうえで、大変な努力をされて論文やWikipedia等の記述を引用されたり、業界の一般的常識を紹介されたりしてい
  ますが、それらは、ほとんど効果を持ちません。行政によって単なる「私的見解」と決めつけられてしまうからです。たとえ、それが有力な学説
  であっても、判例であっても同様です(最高裁判決として確定しているものは別)。
  4.行政を攻めるには法律が有効
   行政を攻めるうえで有効なのは、法律(施行令や施行規則を含めた法令)です。できるだけ、法律を活用して攻めることが大事です。
   黒井事件については、刑法や農地法等も活用されていますが、最も柱にすべきは廃掃法であり、廃掃法の活用の仕方が不十分な印象を受けます。
  5「廃棄物混じり土の不法投棄」でなく「産廃の不法投棄」で攻める
   廃掃法の中でも黒井事件に関して最も重要なものは、「廃棄物」の定義です。
   環境省は、廃棄物の概念規定として「占有者が自ら利用し、又は他人に有償で売却することができないために不要になった物をいい、これらに
  該当するか否かは、その物の性状、排出の状況、通常の取扱形態、取引価値の有無及び占有者の意思等を総合的に勘案して判断する」という、
  いわゆる「総合判断説」を採用しています。平成11年3月10日最高裁判決も、おからを産廃と判断するうえで総合判断説を採用しています。
   総合判断説の判断要素のなかで大きなウエイトを占めるのが、有償で売却できるか否か、すなわち「取引価値の有無」です。
   「総合判断説」によれば、「廃棄物混じり土」が廃棄物か否かは、廃棄物の質や混入度によって変わってきます。そのため、下関市が行なって
  いるように、「廃棄物は僅少」などと言ってごまかす余地も出てきます。
   他方、「コンクリートくず」が廃棄物か否かは、明白です。廃掃法施行令2条で明確に「産業廃棄物」として規定されているからです(工作物
  の新・改築、除去に伴って生じた場合には九号、その他の場合には七号)。
   ですから、「廃棄物混じり土の不法投棄」で攻めると誤魔化されますが、「産廃(コンクリートくず)の不法投棄」で攻めると誤魔化せなくな
  るのです。また、アスファルトくずについては、九号の「その他これに類する不要物」にあたるとして、やはり「産廃の不法投棄」で攻められると
  思います。
   「産廃の不法投棄」は、廃掃法16条(何人も、みだりに廃棄物を捨ててはならない)違反に当たります。
   その際、産廃の処分については廃掃法施行令に定める「埋立処分基準」を満たさなければならないこと、また、産廃の保管については廃掃法施行
  規則に定める「産業廃棄物保管基準」を満たさなければならないことを指摘すれば、不法投棄を認めさせやすいと思います。

  今まで、市民が自ら熱心に学習する必要性を強調してきたのですが、今回、そこにちょっとしたコツがあること。そのコツを会得するには、長年、
 当該問題を研究してきた研究者からの助言が役に立つことを学びました。
  また、上記3,4に記していますが、文献資料を幅広く渉猟することは大事ですが、同時に、行政を攻めるうえでは、文献等は論拠になり難いこと、
 法律での攻めが有効なことを市民が知っておいたほうがいいと思いました。
  金山さん、鍬野さん達は、1月4日付け文書に基づき、次のような公開質問状を下関市に出されました。
  下関市への公開質問状(2023.1.20)
  下関市の回答が楽しみです。

◇2023年2月20日
 1.お粗末極まる下関市の回答
  公開質問状(2023.1.20)に対する下関市の回答は、次のとおりです。
  公開質問状(2023.1.20)への下関市回答
  実質的に、質問①に対する次のような回答しかありませんが、「コンクリートくずは産廃ではないか」との質問に対して「残土は廃棄物ではない」
 と全く的外れの回答しかしていません。お粗末極まる回答です。
   [質問1]
    本件残土には、コンクリートくず、アスファルトくず等(以下、「コンクリートくず等」という)が混入していますが、コンクリートくず等は、
   廃掃法上の「産業廃棄物」に当たるのではないでしょうか。
  【回答】
    令和4年5月25日付け下廃第882号でお答えしたとおり、本件残土に混入しているコンクリートくず等については、それらが廃棄されたもので
   あるならば、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(以下「廃掃法」という。)上の廃棄物となる可能性がありますが、本件残土を廃葉物とは判断
   できないということは、これまでも繰り返しお伝えしているところです。したがいまして、本件残土については、廃掃法に基づく対応はできない
   ものと考えております。
  この回答をめぐって金山さんや鍬野さん達が弁護士と共に2月15日に下関市に交渉に行かれましたが、立ったままのひどい対応に終始したようです。
 2月15日の交渉記録を送って下さるとのことで、それが届いてからアップしようと思っていましたが、記録が遅れるとのことで、回答をアップすること
 にした次第です。
 2.熱海市の事例ーー残土と産廃
  熱海市の違法な盛土が惨劇をもたらしたことはご存知のことでしょうが、あの事件でも残土の中に汚泥や木くず等の産廃が混入されていたようです。
  鍬野さんから送っていただいたYahooニュースを次に掲げます。
  Yahooニュース 熱海の事例
  ニュースのなかに次のような記述があります。
   2010年8月、市は現地で、残土に木屑が混入しているのを見つけ、県の県東部健康福祉センター(産廃を所管)に連絡し、両者で再度確認した。
  木屑は産廃なので、産廃で造成すると、廃棄物処理法違反(不法投棄)となる。県は撤去を要請した。
  「木くず」を「コンクリートくず」に置き換えれば、黒井不法投棄と全く同じです。にもかかわらず、下関市は頬かむりしているのです。
  地方分権の美名に隠れて、全国で同様な事例が起っているはずです。

◇2023年3月12日
 1.2月15日交渉の録音起こし及び録音
  鍬野さんから公開質状4(2023.1.20)への下関市回答(2023.2.7)をめぐる2月15日交渉の録音及び録音起こしを送っていただきましのたで、次に
 掲載します(録音は二つのファイルに分かれています)。
  録音起こし
  録音1
  録音2
  下関市の対応、きわめてひどいものです。「コンクリートくずは産廃ではないのか」との質問に「コンクリートくず混じりの残土は廃棄物ではな
 い」と的外れの回答を繰り返しています。ただし、わずかに新しい回答として、「廃棄されたものなら廃棄物となる可能性がある」と答えています。
  しかし、「廃棄されたものは」との条件の法的根拠はどこにあるのか、と問われて、何も答えられていません。
  廃棄物処理法によれば、「廃棄物」の定義は、燃えがら、汚泥等の「汚物又は不要物で固形状又は液状のもの」というもので、「廃棄されたか否か」
 は要件ではありません。「産廃」の定義も、「事業活動に伴って生じた廃棄物のうち、2条及び政令で指定されたもの」であり、「廃棄されたか否か」
 は要件ではありません。
  「産廃」の定義では「事業活動に伴って生じた」が要件になっていますので、本件コンクリートくずは、「事業活動に伴って生じた」ものであれば
 産廃、そうでなければ一廃ということになります。
  そして、産廃であれ、一廃であれ、廃棄物処理法で定められている保管基準を満たさずに放置されていれば不法投棄になります。