〇米子産廃処分場問題(鳥取県)

◇2018年11月12日
  米子市が米子市淀江に計画している産廃処分場問題です。
  この処分場問題では、4年半前、反対運動が始まった頃、講演会で報告したのですが、今度は、行政がかなり手続きを進め、住民の同意を
 とる段階にまで追い込まれたため、計画を中止させる方法を教えてほしいということで、11月11日(日)に日帰りで行ってきました。
  前回(2014.4.21)と今回の二回の報告のレジュメを次に掲げます。
   処分場は子孫への時限爆弾(2014.4.21)
   公共事業を止めるための運動論(2018.11.11)

  二つのレジュメの違いに着目してください。
  2014年のレジュメは、処分場がいずれ必ず汚染をもたらす時限爆弾であることを説明しています。といっても、通常の自然科学者のように、
 ppmや化学記号を使うことなく、制度や仕組みを中心に論じています。
  2018年のレジュメは、明確に、権利に基づいて事業を止める方法を説明しています。
  二つのレジュメの違いは、運動の初期か最終段階かの違いに因ります。運動の初期には、処分場とは如何なるものか、汚染をもたらすことが
 不可能なものかを学ぶことが大事であり、最終段階では、「権利者が権利を学び主張する」ことを柱にして運動を組み立てるべきことを学ぶこと
 が大事なのです。つまり、運動の段階によって学ぶ必要のあるテーマが変わってくるということです。

  もう一点、2018年のレジュメをご覧いただければわかるように、営業権でも漁業権でも水利権でも事業を止める方法は、全く同じなのです。そ
 して、水利権でたった一人の水利権者がゴルフ場開発を止めた、次の判例(とても優れた判決です)に示されるように、たった一人の権利者が事業
 を止めることができるのです。
   慣行水利権に関する長野地裁諏訪支部1981.4.28判決
  要するに、権利者を主体にして運動を組み立てれば、そして、一人の権利者が頑として事業に同意しなければ、事業はできないということなのです。

  この報告に、権利者の方たちが大変喜ばれる一方で、これまでppmや化学記号による方法で取り組んできた人たちの一部は不満だったようですし、
 中には「これからどうしたらよいかわからない」と言われた方もいました。
  しかし、戸惑いや反発があることは、無関心よりもいいことです。自らの関わりを振り返り、再度運動の中での自分役割を見直す契機になり得る
 からです。
  その結果、権利者主体の運動において、権利者をサポートする(例えば、権利について共に学び、理解をサポ-とする等)役割を果たすか、従来の
 取組みを続けるか等の方法を自ら選ばれればよいと思います。
  ただし、「運動に貢献するために取り組む」のであって、「自分の取組みのために運動がある」わけでは決してないこと(おそらく、自分の取組み
 を始められたときの初心・原点)を思い起こしていただきたいと思います。その想起を欠くと、いつのまにか、築地の運動の中澤誠氏やU弁護士のよ
 うに、自分の手柄をあげるために運動を利用するような人間に堕してしまいますので(HP「築地市場の閉場・解体問題」を参照)、くれぐれもお気を
 付けください。

  かといって、ppmや化学記号による方法による取組みが意味がないと言っているわけではありません。これまでのその取組みは、運動を広げるうえ
 でも、また行政と対峙するうえでも、十分意味があり、効果もあったと思います(ただし、留意していただき点がありますが、それは「築地市場」の
 ほうでいずれ取り上げます) 。
  しかし、書類に印鑑を押すか否かの最終局面では、頑として事業に同意しない権利者をつくることが最重要であることは間違いありませんし、その
 認識は共有していただきたい、と思います。
  そのことは、築地市場問題(HPの「築地市場閉場・解体問題」を参照)のこれまでの経緯を見ても明らかだと思います。

◇2020年6月27日
 1.近況を聞きました
  2018年11月11日の講演会から約1年7ヶ月が経ちましたので、近況を聞こうと26日に運動の中心メンバー大谷輝子さんに電話しました。
  2018年11月当時存在していた専門家委員会がダメだったので、その後、知事がメンバーを選んだ安全委員会を作り、2年間の調査をすることになっ
 たそうです。
  また、担当が、環境保全室から建設部に変わり、態度も発言内容も、環境保全室よりまともになったそうです。
  権利に関しては、漁業権のほうは、漁協の反対姿勢が弱くなったけれども、水利権のほうは住民が頑張っているとのことでした。
  着工間近だった2018年11月当時よりは状況が良くなりましたが、「安全性」についての委員会は当てになりません。あくまで自分たちの持つ権利に
 基づく闘いが大事です、と話しましたが、大谷さんも理解されていました。
  環境部局は、事業自体の決定権を持たず、「事業ありき」の対応しかしませんので、担当が建設部に変わったほうが対応がまともになる、というの
 は、十分あり得ることです。
  いまのところ、小休止状態で、調査の結果待ちですが、引き続き、チェックしていきたいと思います。
  大谷さんも、私から電話があったことを皆さんに伝えてくださるとのことでした。皆さんを励ますことになれば幸いです。

◇2022年9月25日
 1.地下水調査会の検討結果
  処分場反対運動の中心メンバー大谷輝子さん(元県会議員)から手紙が届き、平井鳥取県知事が9月議会に処分場建設のための予算を計上していると
 のことです。調査(アセスメント)をつうじて「日本で最高の先生方に検討してもらった」とマスコミに伝え、住民の疑問には一切答えないまま、事業
 を進めようとしているのだそうです。「事業を進めるための『地下水調査会』であったことがはっきりと示されました」と記されています。
  日本の環境アセスメントは、「アワスメント」と揶揄されているように、事業実施のための免罪符の役割を果たしています。事業者が環境アセスメ
 ントを実施し、その費用も負担するのですから、br>そうなるのが当然ともいえるのです。そんな環境アセスが米子でも繰り返されたということです。
  ただ、2018年11月に水利権に基づく闘いを提言してから4年弱が経ちましたが、この間、事業者側が、まがりなりにも「安全委員会(地下水調査
 会)」をつくり、地下水汚染の可能性を検討せざるを得なくなったことは、予想通りの結果になったとはいえ、一つの成果と言えると思います。
  大谷さんによれば、周辺一帯の水源調査を水道局と共に長年進めてこられた島根大学名誉教授の山内靖喜先生に地下水調査会の報告をチェックして
 いただくとのことです。
  処分場が建設されることになっても、それで終わりではありません。肝腎なことは、処分場建設後の地下水汚染を防ぐことです。
  ドイツでは、処分場跡地及び工場跡地から地下水汚染が生じないよう、永久監視を行なっています。汚染が発覚したら、周囲に矢板を打ち込んで、
 汚染を防ぎ、再び監視を続けるのです。技術のみで汚染を永久に防ぐことは不可能なので、そのような永久監視の制度を設けることで対処しているの
 です。
  ドイツの制度に鑑みれば、日本の処分場でも、建設中及び建設後に、周辺地下水を永久に監視する制度を設けさせることが大事です。
  処分場建設に対して水利権を活用して地下水調査をさせた実績に基づき、それをさらに発展させて、周辺地下水の永久監視の制度を鳥取県で実現して
 ほしいものです。
  電話でそのような話を大谷さんにしましたが、大山の伏流水という恵まれた条件を持つ米子で地下水永久監視の制度が実現してくだされば、日本全国
 の処分場反対運動にも大きな示唆と希望を与えてくれると思います。