〇盛土問題(千葉県)

 船橋市が、盛土に伴う周辺地域の浸水増大の恐れを全く考慮せずに「ふなばしメディカルタウン構想」を進めている問題です。
◇2022年4月28日(火)
 1.盛土は周辺の浸水深を増大させる
  風呂桶に身体を沈めると湯水の水位が上がることは誰もが知っていることです。
  それと同じように、浸水の常襲地帯で盛土をすれば周辺地域の浸水位が上がることになります。盛土は、盛土を実施する地域の浸水被害を
 軽減しますが、その周辺地域の浸水被害を増大させてしまうのです。
  ところが、都市計画法は、この問題を全く考慮していません。
  盛土や切土は「土地の形質の変更」にあたり、都市計画法は、建築物の建築等の目的で行なう「土地の区画形質の変更(土地の区画や形質
 の変更)」を「開発行為」として、その規制を行なっています。同法は、「開発行為」を実施するには、知事又は「指定都市等の長」の許可
 が必要であるとし(29条)、開発許可の基準を33条1項に一号から十四号まで列挙しています。そして、開発行為が一号~十四号に違反して
 おらず、かつ申請の手続きが都市計画法に違反していないと認めるときは、開発許可をしなければならない、と規定しています。
  ところが、一号~十四号では、盛土を行なった地域からの排水しか考慮しておらず、盛土に伴う周辺地域の浸水深増大の問題は全く考慮して
 いないのです。
  都市計画法は「都市の健全な発展と秩序ある整備を図ること」を目的とした法律ですが、これでは、「都市の健全な発展」や「秩序ある整備」
 など望めるはずがありません。
 2.ふなばしメディカルタウン構想
  船橋市は、海老川上流地区において、老朽化した医療センターの移転や東葉高速鉄道の新駅設置を核とした新たなまちづくり「ふなばしメディ
 カルタウン構想」を進めています。
  同構想については、次のURLのサイト又はpdfファイルをご覧ください。
  ふなばしメディカルタウン構想
   ふなばしメディカルタウン構想
  船橋市は、メディカルタウンを土地区画整理事業をつうじて整備しようとしていますが、その土地区画整理事業の概要は次のとおりです。
   事業名:船橋都市計画事業海老川上流地区土地区画整理事業
   施行者:船橋市海老川上流地区土地区画整理組合
   施行面積:約42.3ha
   事業費:191.5億円
   認可権者:船橋市
   認可日:令和4年3月4日
   排水計画:調整池は、事業区域内における時間雨量約70mmの降雨に対応した規模とし、流出量を抑制することで下流域への負荷が増すことが
        ないように計画
 3.海老川上流地区土地区画整理事業の問題点
  嘉田由紀子参議院議員のお世話で4月14日に参議院議員会館で千葉県交渉を持つことができました。
  県交渉での船橋の住民団体「流域治水の会」(山田素子代表)の報告レジュメには、事業概要及び主な問題点が次のように記載されています。
   <事業の予定と現状>
    事業予定地の広さ 42.3 ha
    工期 12年
    失われる遊水量(業務代行業者による盛上の試算) 45万㎥
    予定地内に計画されている調整池の総容量 4.4万㎥
    海老川下流域の人口 15万人
   <問題点>
   1.今まで遊水地として機能してきた海老川上流地区を盛上で潰すことで遊水量が失われて洪水が起きる。しかしこの重大性が行政(船橋市)
    に理解されていない。
    ①1月の県の都市計画審議会で、市は遊水量の棄損について検証をするように言われたが、市はこれを行っていない(指摘の内容が理解で
     きないとのこと)。
    ②市は調整池を造るので問題ないとしている。
    ③海老川調節地は海老川を時間50ミリ対応にするために計画されているもの。今回の事業予定地から溢れてくる水を受け入れたら、それだ
     けで満杯になり、海老川の低い排水能力(時間30ミリ)はそのままになってしまう。
   2.県が行う河川工事でも洪水の危険
    海老川の排水能力:将来にわたって時間30ミリ。にもかかわらず、上流で海老川に合流する飯山満川を時間50ミリ対応に拡張。洪水は必至。
   3.この事業が「海老川水系全体Jに与える影響を考えている主体がない。誰が流域全体を見て対策を作るのか?
    ●昨年策定された県の「海老川水系流域治水プロジェクト」にも、この事業への対策が含まれていない。
    ●事業計画を作る組合と施工代行業者は、事業区内のことしか見ない。ゆえに区域内の保水能力を確保すればよいとの認識しかない(45万㎥
    の盛り土に対し、調整池の総容量は4.4万㎥)。
    ●市は市、県は県、という意識と、お互いへの遠慮があるのか、この事業の問題点を共に考えようとする姿勢が見えない。

  土地区画整理事業の排水計画には、「調整池を設けることで下流域への負荷が増すことのないように計画」する旨記してありますが、調整池は、
 事業区域に降る雨を貯留するものであり、盛土によって失われる遊水機能を補うものではありません。
  「流域治水の会」では、そのことを「保水機能」と「遊水機能」という言葉を使って区別しています。調整池は、事業区域に降った雨水を貯留す
 る保水機能を持っているにすぎず、遊水機能を持っていた事業区域で盛土を実施することによって失われる遊水機能を補うことはできないのです。
  休耕田などで遊水機能を持っていた海老川上流地区で盛土を実施すれば、下流域で浸水深が増大するのは当然です。治水問題は、流域全体を視野
 に入れて「流域治水」として考えていく必要があります。ところが、都市計画法は、1で述べたような欠陥を持っており、「流域治水」の視点を欠い
 ているのです。
  海老川上流地区土地区画整理事業の問題点を分かり易くまとめた読売新聞記事を次に掲げます(ただし、記事では「アスファルトに覆われること」
 に伴う遊水機能低下を問題にしていますが、正確には「盛土に伴う遊水機能低下」です)。
   上流域開発「治水」焦点
 4.千葉県への回答要求
  私は、読売新聞記事に記載されいてる石崎勝義氏(元建設省河川局災害対策調査室長)から依頼されて本件に関わるようになり、4月14日の千葉県交
 渉にも参加しましたが、次のようなレジュメ・資料に基づいて、本件事業の法的問題(「下流住民の財産権侵害」と「適正手続の欠如」)を指摘し、
 千葉県の回答を要求しました。
  現在、千葉県からの回答を待っているところです。
   千葉県交渉レジュメ
   千葉県交渉資料
 5.「流域治水の会 船橋」のホームページをリンク
  「最近の取組み」の事例に「盛土問題(千葉県)」を加えるとともに、「流域治水の会 船橋」のホームページをリンクさせていただきました。

◇2022年5月16日
 1.船橋市、土地区画整理組合と交渉
  5月13日に船橋市、海老川上流地区土地区画整理組合とそれぞれ交渉を持ちました。
  交渉での流域治水の会からの要望書、石崎勝義氏からの意見書、及び私のレジュメ・資料を次に掲げます。
   流域治水の会要望書
   石崎意見書
   船橋市・組合交渉レジュメ
   船橋市・組合交渉資料
  船橋市にも組合にも技術的及び法的問題点を指摘・説明することができました。組合とも、追及調にならず、共にいい街づくりを目指しましょう
 という趣旨の気持ちの良い交渉が持てたと思います。
 2.千葉県が船橋市にシミュレーションのやり直しを命じる
  13日の午前中にわかったのですが、船橋市はシミュレーション結果を踏まえて5月下旬に市民への説明会を開く予定だったのですが、千葉県から
 シミュレーションのやり直しを命じられたそうです。4月14日の千葉県交渉の成果と思われます。
  もしも、裁判を起こしていたら、「係争中」を理由に直接交渉を持てなかった可能性が高いです。
  私は、かねがね、裁判をやるよりも直接交渉をしたほうが成果があがるという見解を持っていますが、船橋盛土問題でも、それが証明されつつある
 と感じています。
 3.流域治水の会の動画
  流域治水の会で「船橋を洪水から救え」という動画が作成され、運動に活かされています。
  船橋市の水害や治水の歴史をよく調べてあり、調節池のこともよくわかる動画です。そのうえ、ナレーションがとても素晴らしいです。
  拝見して、「ナレーションがプロ並み」との感想を代表の山田さんに送ったところ、「ナレーションを行なったのは息子で、プロです」との返信
 をいただきました。内容もナレーションも市民が作ったものとして出色の動画(約20分)です。次に掲げますので、皆さんもどうぞご鑑賞ください。
   動画1.船橋を洪水から救え
  流域治水の会では、今後も動画の作成を企画しているそうです。第2作、第3作、‥‥を楽しみにしましょう。

◇2022年6月7日
 1.流域治水の会の動画がYouTubeにアップ
  5月16日に紹介した流域治水の会の動画がYouTubeにアップされました。次のサイトです。
  流域治水の会のYouTube動画
  治水問題を考えるうえでとても参考になる動画ですので、皆さんも拡散にご協力ください。

◇2022年6月10日
 1.船橋市の回答が出される
  5月13日に持った船橋市交渉において提出した「流域治水の会要望書」への回答が6月9日付けで出されました。次に掲げます。
   流域治水の会要望書への船橋市回答
 要するに
 ①都市計画法、土地区画整理法に関しては違法な点はない
 ②憲法29条、31条に関しては、シミュレーション結果待ち
 ということで、行政としては、こう答えるだろうな、と推測されるものでした。
  流域治水の会によれば「職員は、極力ものを考えないようにしているように見えました」とのことですが、これも市町村職員の普通の姿勢です。
  流域治水の会は、行政との交渉が初めてなので、素直な市民感覚で立腹されていますが、行政交渉を何度も経験している私には、普通に感じられ
 るところが、日本の行政の悲しい実態を表わしています。
  しかし、本件では、嘉田議員と熊谷知事の信頼関係がありますので、船橋市の思惑通りには運ばないでしょう。
  千葉県の対応に期待しましょう。

◇2022年7月26日
 1.組合がフジタに10億円を支払う
  流域治水の会から、土地区画整理組合が銀行から10億円を借り入れ、フジタに支払ったとの知らせをいただきました。
  10億円が何に対して支払われたかは判然としませんが、メディカルウン事業の施行者であるフジタに支払われたこと及び額の大きさからみて、
 朗報であることは間違いなさそうです。
  流域池治水の会では、メディカルタウン事業の代替案として海老川上流地区に縄文時代の遺跡・貝塚が点在することに基づき「縄文の海」プラン
 を提案されています。また、海老川上流地区の地質・地盤に照らしてメディカルタウン事業は危険であると指摘されている千葉大学理学部の水谷武司
 元教授からのメールも公開されています。
  次に、海老川上流地区の遺跡・貝塚、「縄文の海」プラン及び水谷武司氏のメールを掲載します。
   海老川上流地区の遺跡・貝塚
   「縄文の海」プラン
   水谷武司元教授からのメール

◇2022年8月4日
 1.現地見学が千葉テレビで報道される
  流域治水に取り組んでおられる嘉田由紀子参議院議員が8月4日に船橋の現地見学をされましたが、嘉田議員からのお誘いを受け、私も現地見学に
 同行しました。
  現地見学の模様が千葉テレビで報道されましたので、そのサイトを次に掲げます。
  2022年8月2日の現地見学(千葉テレビ報道)
  なお、7月26日に「朗報」と記しましたが、事業は決してあきらめられておらず、シミュレーション結果を得て市民への説明会を開いた後、着工する
 ことをもくろんでいるようです。